インターネットを利用する際は、セキュリティやプライバシーの保護が欠かせません。VPNを利用すれば、海外コンテンツへのアクセスや公共Wi-Fiの利用を安全に行えます。
VPNの仕組みや使い方がよくわからないという方は多いでしょう。
本記事では、VPNの基礎知識や使い方、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。
記事を読めば、VPNの選び方がわかり、安全にインターネットを楽しむための知識が身に付きます。
VPNとはインターネット上に仮想の専用回線を設定する接続方式
VPNは、インターネット上に仮想の専用回線を設定し、安全で自由なインターネット利用を可能にする技術です。
VPNを理解するための基礎知識として、以下の3点について解説します。
- VPNの仕組み
- 主なVPNプロトコル
- VPNと他の技術の比較
VPNの仕組み
VPNの仕組みは、インターネット上の暗号化された仮想トンネルのようなものです。仮想トンネルを通じて、ユーザーのデータを安全に送信します。VPNを利用した通信の流れは、以下のとおりです。
- データを暗号化する
- 送信元のIPアドレスを隠す
- VPNサーバーをIPアドレスへ置換する
- VPNサーバー経由でデータを送信する
VPNは通信を守り、地理的制限を回避できます。VPNを使うと、ユーザーの匿名性が高まり、公共のWi-Fiを使う場合でも安全です。多くのVPNサービスが世界中にサーバーを置いており、さまざまな国や地域のIPアドレスを使って通信できます。
主なVPNプロトコル
VPNプロトコルは、VPN接続を確立するための規則や手順を定めたものです。主なVPNプロトコルには、以下が挙げられます。
VPNプロトコル | 特徴 |
OpenVPN | セキュリティが高く、幅広いデバイスに対応 |
IPsec | 安全で高速、企業で使われる場合が多い |
L2TP/IPsec | 設定が簡単で広く使用 |
PPTP | 比較的旧式 |
SSTP | Windowsパソコンとの相性が良い |
IKEv2 | スマートフォンとの相性が良い |
WireGuard | 新しいタイプ、軽くて速い |
プロトコルは用途やデバイスに応じて選びましょう。安全性を重視するならOpenVPNやIPsec、速度を重視するならPPTPやWireGuard がおすすめです。
VPNと他の技術の比較
VPNと他の技術の違いについてまとめました。
他の技術 | VPNとの違い |
プロキシサーバー | VPNの方が暗号化されており、安全性が高い |
Tor | VPNの方が高速だが、Torの方が匿名性が高い |
SSHトンネリング | VPNの方が広範囲のアプリケーションに対応 |
IPsec | VPNの方が柔軟で設定しやすい |
SNIプロキシ | VPNの方が包括的なプライバシー保護を提供 |
SmartDNS | VPNのような暗号化の提供はないが、SmartDNSの方が高速 |
VPS | VPNのような専用のセキュリティ機能を持たない |
CDN | VPNはプライバシー保護に特化、CDNはコンテンツ配信に特化 |
VPNは安全性とプライバシー保護に優れた技術です。目的に応じて適切な技術を選びましょう。
VPNの種類
VPNにはさまざまな種類があり、用途や環境に応じて選択できます。主な種類は、以下の3つです。
- リモートアクセスVPN
- サイト間VPN
- モバイルVPN
リモートアクセスVPN
リモートアクセスVPNは、インターネットを介して個人のデバイスから会社のネットワークに安全に接続する仕組みです。
在宅勤務や出張先からでも、社内のシステムやデータへアクセスできます。
暗号化技術でデータを保護するため、ユーザー認証によるセキュリティの確保が可能です。
クラウド型VPNの普及で、導入や運用が簡単になりました。
個人が海外のコンテンツにアクセスする目的で使う場合には、利用規約に反しないよう注意が必要です。
サイト間VPN
サイト間VPNは、複数の拠点をインターネット経由で安全に接続する仕組みです。本社と支社、取引先などの離れた場所にあるネットワークをつなぐ際に適しています。
サイト間VPNは、インターネットを利用して仮想専用線を構築します。実際の専用線を引くよりも低コストで柔軟なネットワークの構築が可能です。
サイト間VPNの主な利点は、以下のとおりです。
- データやリソースが安全に共有できる
- コストが削減できる
- 柔軟なネットワークが構築できる
- セキュリティが向上する
サイト間VPNではIPsecなどのプロトコルを使ってデータを暗号化することで、情報を安全にやり取りできます。
通信速度は一般的なインターネット回線に依存するため、専用線ほどの安定性は期待できません。サイト間VPNは、企業や組織が複数の拠点間で安全に情報をやり取りする際に適しています。
モバイルVPN
モバイルVPNは、スマートフォンやタブレットなどの移動端末で利用できるVPNサービスです。外出先でも安全にインターネットに接続できるため、便利です。
アプリ内で簡単にVPN設定ができ、個人情報を保護しながら公衆Wi-Fiを利用できます。海外のコンテンツへのアクセスも可能です。
VPNのメリット・デメリット
VPNの使用に伴うメリットとデメリットについて解説します。
- VPNのメリット
- VPNのデメリット
VPNのメリット
VPNのメリットは、以下のとおりです。
- プライバシーとセキュリティが強化される
- 地理的制限を超えてコンテンツにアクセスできる
- オンラインからの追跡やモニタリングから身を守れる
- 検閲や規制を避けられる
- 社外から社内ネットワークへ安全にアクセスできる
- オンラインバンキングやショップが安全に利用できる
- 海外旅行中の安全な通信環境を確保できる
VPNを利用すると、インターネット上の通信が暗号化されるため、個人情報や機密データを守れます。
海外のストリーミングサービスで配信されているドラマを視聴するなどの地理的制限を超えることも可能です。IPアドレスが匿名化されるため、オンラインからの追跡やモニタリングからも守れます。
VPNのデメリット
VPNのデメリットは、以下のとおりです。
- インターネットの接続速度が遅い
- VPNの設定や利用には技術的な知識が必要
- 信頼性の低いサービスを選ぶとセキュリティリスクが高まる
- 一部のウェブサイトやサービスではアクセス制限がある
- バッテリー消費が増える
- 一部の国では使用が制限される
VPN経由では、暗号化や通信経路の長さにより速度が低下します。VPNの使用を制限する国もあるため、海外から利用する際には注意が必要です。
VPNは便利なツールですが、デメリットを理解したうえで使用しましょう。
VPNの選び方
VPNを選ぶ際は、以下の3つの点を考慮して検討してください。
- 用途
- 機能
- コスト
用途
VPNの主な用途は以下のとおりです。
- 地域制限のあるドラマや映画を楽しむ
- インターネット上の行動を匿名化する
- 公共Wi-Fiを安全に使用する
- 海外のウェブサイトやサービスにアクセスする
- リモートワークで社内ネットワークに安全に接続する
- オンラインショッピングで異なる地域の価格を確認する
- P2P通信をする
- 検閲を回避する
VPNの用途は多岐にわたるため、用途に応じて適切なVPNサービスを選びましょう。
機能
VPNのセキュリティ面においては、暗号化やIPアドレスを隠す機能が大切です。サーバー数や地理的分布が多いと、接続の選択肢が増えるため、安定した通信が期待できます。
快適なインターネット利用のためには、接続速度と帯域幅も確認しましょう。
コスト
VPNサービスにかかるコストは、選択するプランや機能によって大きく変わります。無料プランは機能が限られるため、有料プランがおすすめです。
有料プランの料金体系には、月額制と年間プランがあります。年間プランを選ぶと、月額料金よりも安くなる場合が多いです。
VPNサービスの一般的な料金は、月額500~2,000円程度です。複数のデバイスで使用したい場合には、追加料金が必要になる可能性があります。
家族で使える複数デバイス対応のプランもあります。
支払い方法はクレジットカードや銀行振込など、複数の方法が用意されています。
割引キャンペーンや紹介プログラムを利用すると、よりお得な利用が可能です。
VPNの設定と使い方
VPNの設定と使い方について、個人向けと企業向けに分けて解説します。
- 個人向け
- 企業向け
個人向け
個人でVPNを利用する際の手順は、以下のとおりです。
- VPNアプリをダウンロードしてインストールする
- アカウントを作成する
- サブスクリプションプランを選ぶ
- アプリを起動する
- 接続する国のサーバーを選ぶ
- 接続ボタンをクリックする
多くのアプリでは、起動した際に推奨サーバーが表示されます。接続ボタンをクリックすると、VPNが有効になり準備は完了です。ブラウザやアプリを開いて、VPNを利用します。使用後は忘れずに切断ボタンでVPNを無効にしましょう。
VPNの安全性を高めるためには、以下も大切なポイントです。
- 定期的にアップデートする
- 信頼できるWi-Fiを利用する
- 強力なパスワードを設定する
- 2段階認証を有効化する
正しい手順を踏めば、個人でも簡単かつ安全にVPNを利用できます。
企業向け
企業でVPNを使用する際には、セキュリティと効率性が重要です。以下の点を意識しましょう。
- ファイアウォールを適切に設定・管理する
- アクセス権限の付与は必要最小限にする
- 多要素認証を導入する
- データ暗号化を強化する
- ログの監視と分析を行う
- リモートワーク環境を整備する
- クラウドサービスと統合する
- スケーラビリティを確保する
- コスト管理を行う
- コンプライアンス対策を行う
- インシデント対応計画を策定する
- バックアップを確保する
- 災害復旧計画を整備する
セキュリティポリシーの策定と従業員の教育のためには、パスワード管理のルールと機密情報の取り扱い方を決めてください。
ソーシャルエンジニアリング対策も重要なポイントです。企業のVPN利用においては、万が一の事態に迅速に対応するための体勢を整えておく必要があります。
VPNに関してよくある質問
VPNに関してよくある以下の質問について解説します。
- VPNは法的に問題ない?
- VPNを使うと通信速度は遅くなる?
- VPNは24時間365日使用するべき?
VPNは法的に問題ない?
VPNの利用自体は、合法です。多くの国で、個人情報を守るためのVPNの使用が認められています。著作権侵害などの違法行為に使用しない限り、法的な問題は起こりません。
企業や政府機関でも、セキュリティ強化のためにVPNを使用しています。個人情報保護法の観点からも問題ありません。
VPNを使うと通信速度は遅くなる?
VPNを使うとインターネット速度が遅くなる可能性があります。VPNによる暗号化処理が原因の一つです。
VPNはデータの暗号化にCPUリソースを使うため、処理に時間がかかり、通信速度が低下する場合があります。VPNサーバーまでの距離も、インターネット速度を遅くさせる原因です。
一度VPNサーバーを経由してからデータが目的地に届くため、通信経路が長くなり、速度が遅くなります。VPNで速度低下を抑えるには、以下の対策を検討してください。
- 高品質なVPNサービスを選ぶ
- 自分の位置に近いサーバーを選ぶ
- 軽い暗号化方式を使う
- 有線でインターネットに接続する
VPNを使用する際は、速度テストを行い、環境に合った最適な設定を見つけることが大切です。
VPNは24時間365日使用するべき?
VPNを24時間365日使用する必要はありません。一般的には、必要なときだけ使用します。VPNを常に使っていると、インターネット速度が遅くなったり、デバイスのバッテリーが早く減ったりします。
個人で使う場合は、公共のWi-Fiを利用する際や海外に行った際など、必要な状況でのみVPNを使いましょう。
まとめ
VPNとは、インターネット上に仮想の専用回線を設定する接続方式です。インターネットを利用する際の安全性や利便性の向上に役立ちます。
VPNには、リモートアクセスVPNやサイト間VPN、モバイルVPNなどの種類があります。
VPNのメリットは、プライバシーとセキュリティが強化され、地理的制限のあるコンテンツに接続できる点です。一方で、インターネットの接続速度が遅くなったり、バッテリー消費が速くなったりするデメリットもあります。
個人でも企業でも、目的に合わせてVPNを活用すると、インターネット利用の幅が広がります。自分に合ったVPNを見つけ、より安全で便利なインターネット環境の構築に役立ててください。